またまた、もうすぐ89歳になる、我が母の話です。
母は、できなくなってきたこともいくつかあるのですが、
ほぼ、自立していると思います。
88歳にしては、あっぱれだと思います。
祖母が90過ぎても元気だったから、自分もその気でいて、気丈なんでしょう。
その母の話です。
母は、手芸が好きです。
気分が下向きのときには、どうしようもなく、
ただただぼんやりとこたつむりになっているのですが、
気が向くと、惚け防止とばかりに、針を持ってなにやらちくちく縫っています。
あんなめんどうなこと、私には、真似ができません。
母は、ずいぶん前から、ときどきお手玉を縫っていました。
どうするんだろう、そんなに作って。
聞いてみたら、小学校に寄付したいと。
小学校で、「地域のお年寄りと遊ぼう」みたいな授業があって、
学校に来てお手玉教えてくださいな、なんていう依頼が以前ありました。
そのときは、結局、学校でインフルエンザがはやってしまって、
その行事は中止になったのでした。
学校に行けなくて残念そうにしていた母。
学校でも、お手玉なんかするんだねえ、って言っていた母。
それから、ちくちく、お手玉を作っていました。
そして、先日。
「今日、あったかいから、小学校にお手玉届けて来る」
と、宣言したのです。
何、突然言い出すんでしょう。
歩いて、40分はかかるぞ。
往復、80分は、きついでしょう。
それに、3月と言えば、学校は大忙しじゃないの。
そんなときに行ったら、先生に迷惑でしょうに。
だいたい、お手玉なんて、学校にあるはず、授業で使うんだもん。
‥‥‥という私の心の声は、全く聞こえず(あたりまえか)。
母は、出かけて行きました。
独りで行くから、いい。
学校の玄関で帰って来るからいい。
とかなんとか言って、シルバーカーにお手玉をたくさん入れて、持って行きました。
「今から、学校出ます」というメールが来て、1時間経っても帰ってこない。
心配になって、道路に出ると、ずっと向うの方に、ちょいとよぼよぼ歩く人影。
ありゃ、あれ、母さんだ。
見られないように、慌てて、玄関に入る。
「ただいま~~」
と言う声に、急いで門扉を開ける。
嬉しそうな、母の顔。
こたつに入って、話を聞いた。
帰りに買い物してきちゃった。
(そういうときは、そういうメールをよこせばよいのに)
学校の玄関で、話して、渡して帰ろうとしたら、
結局校長室に案内されて、校長先生とお話してきちゃった。
(やっぱり、そうなるよな)
子供も孫もお世話になったお礼ですって言ってきた。
(母さん、学校好きなんだよね。
子供たちが書いてくれる、毎年の運動会の招待状でさえ大事にとってあるもんね)
校長先生のお母さんより、5つも年上なのにしっかりしてるって言われた。
(そりゃ、そう言うだろうな)
とっても喜んでくれた。
(よかった、邪険にされなくて)
卒業式を控えて、学期末で、大忙しの学校なのに、
突然行った、どこの誰ともわからない老婆のおせっかいに、
心優しく付き合ってくださった、校長先生をはじめ、事務の方やほかの先生方。
ありがたいことだなあと、感謝感謝。
きっと、いい学校なんだろうなあ。
校長先生たちの、あたたかい接し方で、母の寿命も延びました。
ありがとうございました。
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