病院からの帰り道。
1万歩目指してさっさか歩いていた時のことです。
スーパーの傍の電信柱につかまって、立っている年配の方がいました。
腰を伸ばすような仕草をしていました。
柱につかまり、もう一方の手には、買い物袋を提げていらっしゃいました。
お見受けしたところ、80代かなあと。
大丈夫かなあ、声をかけようかなあ。
母と散歩していたときも、たまに、立ち止まって休んだことあったよなあ。
ちょっと休んで、また歩くなんてこと、あったなあ。
でも、道を渡って反対側に行って声を掛けるほど大変な状態かなあ。
側を通りかかっている人は何人もいるし、
その人たちが通り過ぎているのだから、わざわざ私が行かなくても大丈夫なのかなあ。
そんなふうな思いが頭の中を通り過ぎました。
後で思い返せば、
わざわざ、道を渡るほどか?というのは、私の、責任逃れだったんだと。
見て見ぬふりしていることだったんだと。
困っているかもしれないと気が付いたのに、すぐに行動を起こさなかった、情けない私。
そうして、数歩歩いて、気になって、もう一度その方の様子を確かめました。
その方は、しりもちをついて仰向けに倒れていました。
傍には、郵便配達の途中の郵便局員の方が、しゃがんでいました。
バイクを留めて、傍に寄って声をかけていました。
私と、しりもちをついた方の間の道を、何人かの方が、様子を見つつ、通り過ぎます。
わざわざ、通り過ぎた自分が戻って道を渡って声をかけるって、出しゃばりかも。
でも、郵便局員さん一人では、起き上がらせるのは難しいんじゃなかろうか。
出しゃばりでもいいや、行こう。
そう思って、しりもちをついた方のところに行きました。
郵便局員さんに声を掛けました。
「急にしりもちをついたので、びっくりして。立てないみたいなんですよ」
とのこと。
「どうしたいですか、横になりますか。このまま座って休みますか。立ちたいですか」
「頭打っていませんか?どこか痛いところありませんか?」
と、しりもちをついた方に聞くと、
「痛いところはないです。立ちたいです」と。
では、と、郵便局員さんと二人で、どっこいしょと、立ち上がるお手伝いをしました。
重かったです。
立ち上がっても、腰がしっかりしていなくて、ずっと抱きかかえた感じです。
私たちが、歩いて帰るのは無理だというのに、その方は、歩いて帰ると言うのです。
すぐそばに、病院があるので、そこに行きませんか。
または、救急車かな。
いや、緊急性はなさそうだから、タクシーですかね。
そんなことを、郵便局員さんと話していました。
でも、その方は、歩いて帰る。大丈夫。と言って、私たちの言うことを聞いてくれません。
歩けない、動けないのに、歩いて帰るから大丈夫って、何??
私が手を離したら、また、こけちゃいそうじゃん。
困った頑固者だ~~~。
私の母も、大丈夫と言って意地を張ることよくあったので、この人も、そうなのかも。
人に迷惑をかけてはいけません、と、強く教育されてきた世代だもんね。
郵便局員さんが、ふっとんだ眼鏡をとってきてくれて、掛けました。
「とりあえず、私、この荷物持ちますから。
持って逃げたりしませんから」
と言って、買い物してきたらしき荷物を預かる。
じゃあ、歩いてみますかね?と、歩かせようとしても、やっぱり一歩も動けない。
「家は、どこですか? 家にだれかいらっしゃいますか。
いらっしゃるなら、呼びましょう。
または、ご近所に、お身内の方や仲良しさんはいらっしゃいませんか」
と尋ねれば、
ご主人と二人暮らしだが、今出かけている。
家は、近いとのこと。
「住所言ってください。僕、そうしたらだいたい場所わかります」と郵便局員さん。
住所を聞き、郵便局員さんは、すぐにピンポイントで、わかっちゃったので、さすがだなあと。
家の場所はわかりました。
有名なお店の裏の駐車場側。
あ、やっぱり、あそこまで歩くのは、無理そう。
「タクシー呼びますね」というタイミングで、
私たちに声をかけてくれた男性が。
救世主登場。
「大丈夫かなあ。さっき、よろけながら歩いているのを見かけて、心配だから用事が済んだので戻ってきたんだけど、この車で送るよ」
「介護の手伝いで、車出すこともあるから、乗る時の台も、積んであるよ」
救いの神様登場です。
でも、
「皆さん忙しいのに、すまないです。
もう少しで歩けるようになります。
乗せてもらうなんて、申し訳ないです。」
自分一人で立っていられない状態なのに、乗せてもらうことも遠慮するんです。
「そんなこと言ってないで、乗せてもらいましょう。
私も家までついていきますから。
暇人で、ふらふら散歩中なので、お気遣いなく。
はい、乗りましょう、乗せてもらいましょう」
強引に話を進めました。
郵便局員さんは、仕事に戻りました。
配達時間が遅くなってしまって、あのあと、大忙しだったことでしょう。
仕事中なのに、ちゃんとちゃんと、見守ってくれた彼は、いい若者です。
新しく登場した救いの神様と、二人がかりで支えて車に乗ってもらって、家まで送り届けることができました。
めでたしです。
仕事中なのに、ずっと付き添ってくれていた郵便局員さん。
通りがかりで、気にしていて、戻ってきてくれた車の男性。
このお二人がいなかったら、あの歩けなくなっていた方は、どうしたのでしょう。
とにかく、無事に、家の玄関まで送り届けられてほんとうによかったです。
最初に、気になったときに声を掛けられなくて、ごめんなさい。
そうしたら、しりもちついて倒れたりはしなかったかもしれない。
自分の無責任な行動を反省したのでした。
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