先日のこと。
朝起きたら、足の親指の先がしびれて痛くなってきた。
どうしたんでしょうね、と、不安になる。
しびれってのは、結構気にしなくちゃいけないんじゃなかったっけ。
そういえば、数日前には、両手の指先がちりちりしたっけ。三日くらいで症状なくなったけど。
動けなくなるような病気だったら、困る。
ぴんぴんころり、じゃないと困る。
一人暮らしに、動けない状態は、困る。
父さん、脳梗塞だったしなあ。
いろいろぐだぐだ落ち込んでいて、やっぱり、かかりつけの内科の先生に相談しに行こう、と午前ももうすぐ終わりそうな時刻に家を出た。
病院の午前の受付時間終了に間に合わなくては。
あの先生、今日は、午前しかいないんだもの。
出かけました。
雨のなか、しっかり、長靴はいて。
コート着て。
リュックしょって。
急いで歩いていき、信号で止まる。
あれ、あのおじいさん、どうしたんだろう。
(私もおばあさんだけど、私の親世代くらいの方でした)
信号のところに立ち止まっているおじいさん。
おじいさんは、雨が降っているのに傘をささず、
その傘を杖代わりにして、
前にほぼ直角に腰を折り、首からショルダーバッグを下げている。
ショルダーバッグは、斜め掛けしていないので、首から真下にぶらさがり、重そうだし、なにより、体は濡れ放題だし。
「お手伝いしましょうか」
「どうなさいましたか、具合悪いですか」
と、傘をさしかけて話しかけても、なんだか、もごもごとした返事。
これは、あきらかに「困っている」状態。
「どちらに行くのですか、ごいっしょしましょう」
と畳みかけると、
「駅まで。一人で大丈夫」
と言う返事。
でも、そのあと、
「駅への道はどっち」とか言うし。
いやいや、今現在、動けないじゃないですか。
ぜんぜん大丈夫じゃないです。
ぼつぼつ話を聞くと、
出かけてきて、腰がこうなってしまったので、
用事をすますことができずに諦めて家に帰ることにしたとのこと。
お気の毒に、体調悪いのに、がんばって出かけてきたのだろうに。
信号が変わったので、
「あら、私も、ちょうど今から駅に行くところです。ごいっしょしましょう」
腕を支えながら、とぼとぼと歩く。
すぐに立ち止まる。
数歩歩いては、立ち止まる。
こんな天気だから、他にあまり通行人いないじゃない。
非力な私で大丈夫かしら。
駅まで行けるのかしら。
家の人呼びましょうと言っても、大丈夫と言うし。
ショルダー持ちますと言っても、大丈夫と言うし。
「持ち逃げなんかしませんよ」と言っても、首から真下に下げたまま、とぼとぼ歩く。
それに、駅まで行っても、電車に乗れるのかしら。
腹をくくって、向こうの駅まで行っちゃおうかしら、おせっかいだけど。
それにしても。
駅に行けるのか、このとぼとぼ歩きで。
駅まで、少なく見積もっても100メートルはあるな。(後で調べたら、260mだった。)
途中で信号ふたつあるし。
たった100メートル。
歩いてすぐ。
でも、おじいさんの歩みでは、無事つけるかどうか、わからん。
とぼとぼ二人で歩いていると、
救いの神が。
ビルの工事現場の出入り口の安全の仕事をしている若者が、声をかけてくれたのです。
この方が、駅まで行きたいそうで、あちらから付き添って歩いてきたのだけれど、
歩くのが大変そうで・・・・・
と、状況を説明すると、
「私がおぶって行きましょう」
って、言ってくれたの。
おお、たくましい若者よ、なんて、君は、よい心の持ち主なんだ!!!
「よかったですね、おぶっていただきましょう」
と、声をかけるも、
おじいさんは、体を直角にしたまま
「大丈夫です」を繰り返す。
だから、大丈夫じゃないんだってば!
「遠慮はいりません、どうぞ」って若者も言ってくれるし、
「そうよ、遠慮しないでおぶっていただきましょ、さあさあ」
ふたりで、強引にことを進めて、若者はがんばって背負って歩いてくれました。
駅の下に着き、スロープのところでおろしてもらいました。
若者は、安全確保の仕事をしている最中で、職場放棄状態、これ以上時間を取らせるわけにはいきません。
若者がおじいさんを下すとき、おじいさんは、自分の体をささえられず、
私もそれを支えられず、
二人でしりもちついちゃった。
お尻は水たまりで濡れましたあ。
スロープを上がり、エレベーターに乗り、改札がある2階に到着。
駅なので、今度は人通りが多いので、よろよろ歩くのがたいへん。
歩いて止まって歩いて止まってを繰り替えしていると、
私と同年代の女性が声をかけてくれました。
どうやら、私たちを親子だと思ったらしく、一度通り過ぎたのだけれど、大変そうだから戻ってきましたとのこと。
なんて、親切な人。駅に向かっていたのなら、時間も限られているでしょうに。
私が、ただの通りすがりのおせっかいおばさんと知って、彼女は驚いてました。
二人で、両側から支えて歩き、
改札にたどり着いたら、私は小銭入れを出して切符を買うお手伝い、
彼女は、駅員さんに声をかけに行ってくれました。
駅員さんだって、ほかに仕事があるでしょうに、来てくれました。
「あとは、私が、ご案内します」
と駅員さんが言ってくれたので、ほっとしました。
彼女が言いました。
「あなた背中がびしょぬれじゃないの。たいへんだったわね。
あれは、車いすレベルですよ。一人で出歩いたらいけないレベル。
もしかしたら少し認知症も入っているかもしれないわねえ」
そうか、そうなのか。
必死で歩いていたから、そんなこと、少しも考えなかった。
車いすレベルかあ。
向こうの駅に着いたあと、大丈夫かな、家に着くかなあ。
電車で座って揺られてる間に少しは腰の具合がよくなるといいなあ。
なんだか、とっても心配になってしまった。
あんな風に体の自由が利かなくなってきつつあるときに、
私は周りに助けを求められるかしら。
あのおじいさんは、生活面でも不自由してるのは想像できる。
私がそうなったとき、ちゃんと自分でいろいろ手配できるんだろうか。
おじいさんの様子を心配していたのに、
結局自分の遠くない将来の姿を見た感じで、いろいろと考え不安になってしまったのだった。
でも、今日は、若者と駅で会った女性とが声をかけてくれた。
私が急に助けてほしくなった時、
手を貸してくれる人は、一人はいるかもしれない。
その時は、ちゃんと、自分で「助けて」って声を出そうと思いました。
急いで、駅と反対の方にある最初の目的地の病院に向かい、
受付時間ぎりぎりで、
昼休みの支度をはじめそうな雰囲気の中、
「ぎりぎりですみません、先生にどうしても診ていただきたくて」
と診てもらいました。
しびれは心配するような種類のものじゃないので、
「心配しずぎです」と慰められて帰ってきました。
迷惑な患者。
★★★★★★★
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